独り事
2012年05月22日(火)
【夢をみている】
視界は常にボヤけている
ずいぶん前に魔法使いが、ボクの姿を紋白蝶に変えてしまった
毎月お花をくれる人間がいるので、食料に困ることはなく

毎日、日影で羽を休めたり、空を飛んで人間の働いているのを見下ろしていた
人間の頃とは余りにかけ離れた生活

それでも、狭い地上の上にしかいれない人間に戻ろうと思わなかった

思えなかった

人間たちの視界に入らないように、今日も木陰で暮らし、花のミツを吸う

そんなある日、魔法使いから手紙が届いた
紋白蝶になった人にしか来ない手紙が。
何やら、魔法の手帳をくれるというのだ。その手帳があると、今より少しだけ多くのお花がもらえる。
その代わり、私はもう人間ではなく、紋白蝶であることを認めなければならないのだ。
もう、引き返すことは無理だと知っていたので、その魔法の手帳を取りに出掛けた。

すんなり、手帳を手にしたが、羽の模様が綺麗になったとか、そういうことはない。
ただお花がもらえるだけ、もう足りているのに。

帰りは日差しが指す地面に近い空中をゆっくりと羽を動かした。
ふと横を見ると、信号待ちの麦わら帽子の男の子がこちらを見ていた。
目があった一秒後に、男の子がたんぽぽのようにほくそ笑んで、ばいばいをした

思わずつられて笑って羽をふった紋白蝶は、以前はその男の子の隣にいたような人間だったことを思い出した。




15:00


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