第一回入賞作品
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桜賞
倉田 凛さん
あどけないシンデレラ
[恋愛]


乙女は乙女なりに考えているのだ。



あどけないシンデレラ





夜の0時を回ってしまうとシンデレラの魔法はとけてしまうと言うけれど、私の場合もっと早い。


「清矢くん!あ、あのですね!門限は8時なんですよ」

「うん。もう過ぎてるね」

「だ、だからですね。その…あの……、お、お別れの、キ……」


言いかけてやめた。
恥ずかしくて言えやしない。

馬鹿だ!乙女だ!
てかそういうのってもっとムードがある時に自然とするもんじゃないんですか!?

とか一人であたふたしていたら、大人な彼はクス、と笑いまして。


「ん」

「……ん?」


縦に長い体を私の顔の前まで折り曲げて、清矢くんは目を綴じて待機中。

そんでもって私の頭は静止中。

すると彼は薄目を開けてちら、と私の顔を伺い、いきなり後頭部を掴んで軽くキスしてきた。


「今の体勢けっこー辛いよ。あと、あんま見られると俺も恥ずかしい」

「……いや、やられた私の方が恥ずかしいんですけど」


街灯だけが私達を照らしている。
今日は月が出ていない不安げな夜だけど、その分この住宅街はとっても静か。


「顔赤いね、まどか」

「暑いんですよ!マフラーとか邪魔だしっ」


恥ずかしさを消す為にわざと大声を出してみた。

だってすぐそばに清矢くんの顔があるのだから。

睫の長い、綺麗な顔がまた私に柔らかな唇を落とす。


「……まどかさぁ、さっき食べた餃子のにおいがする」

「え!嘘ッごめん!」

「ついでに付け睫、片っ方取れてんよ」


……これ、彼氏に指摘される事でしょうか…?

最悪だー……。
いつにも増して最悪すぎる……。


「俺さ、まどかが餃子とかラーメンとかガツガツ食ってるから、今日キスする気ないのかなって思っちゃった」

「……常識知らずな彼女でごめんなさいぃーっ」


さっきとは違う意味で恥ずかしくなって、私は彼のコートに抱き着いた。

よしよし、と撫でてくれる大きな手が、物凄く愛しい。


「嫌だとかじゃなくて……何つーか、そういうのも可愛いんだけどね」


それは間接的に餃子臭いキスでも許してくれるって事ですね?私は優しく笑う清矢くんの唇に遠慮がちに口づけてみた。


「やっぱ餃子くせー」

「…うぅう……やっぱり彼女しっか」

「うそうそ」


貴方は私の王子様。




end



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