第三回入賞作品
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二位
水沢ケイさん
渡せなかった手紙の話
[ダークファンタジー]


ゆらゆらと風に揺れるのは長い黒髪…
それはまるで日本人形のように美しかった。

ベッドの上から窓越しに見る彼女は、僕の事を知らないのかもしれないけれど


『ねぇ郵便屋さん。彼女に手紙を書くから届けてくれ』

僕は彼女を愛しく思っていた。


郵便屋は僕の視線を追ってすぐに『彼女』が誰だかわかった。

「何故手紙を書くのですか?」

『もちろん書きたいからさ』


僕が即答すると郵便屋は首を横に振った。


「手紙を届ける事は出来ません」




『……どうして?いきなり手紙を渡すと失礼だから?』

郵便屋は首を横に振った。

『別に今日じゃなくても良い。郵便屋さんが忙しくない時でも』

郵便屋は首を横に振った。

『……じゃあどうして駄目なの?』

郵便屋は口を開けば、面白い事を僕に言った。


「人形だからです」


人形…?


『あはははははは!人形だからって…ふは!彼女が人形なんてありえない』

「人形です」

『郵便屋さん、なかなかユニークな事言うね。面白いよ!あんなにさらさらした髪に柔らかそうな肌…とても人形には見えないな』

僕は可笑しくて可笑しくてまた笑ってしまった。



「人形です」


郵便屋は言葉を続けた。




「あなたは人形です」






僕は笑い声にかき消されたその言葉に

今も気付けないでいた。

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