第五回入賞作品
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煙突の中に住んでいたので空は丸く切り取られていました 65pt.

キョウさん�
[ダーク お題提供腐乱犬]

もう俺は何年もここにいる。
きっとこれからもこの中に住み続けるだろう。
本当の持ち主なんて知らねぇ。
だって俺はここしか居場所が無いのだから。


俺の自慢の一張羅はもう限りなく黒に近い灰色になってしまった。
不衛生に伸びた髪の毛や髭は汚く煤けていた。
ベタベタとした不快感にはもう慣れてしまった。

「おい神様、俺が一体何をしたっていうんだい」

上を見上げて、俺は唾を吐きちらしながら神を罵った。
唾は俺に向かって落ちてきた。
良いシャワーだこのチクショウが。


この時期になると外からあの忌ま忌ましい歌が聞こえる。
あぁやめろ!気が狂っちまう!!

俺は歌を掻き消したくて暴れ回った。
もともと体育座りでなんとか収まっていた空間に、手足をこれでもかと思うくらいばたつかせた。
これももう、毎年の事だ。

壁には俺が引っ掻いた傷やひび割れた跡がちらほらあったが、また灰で埋まっていった。


俺はもう何もなかった。
相棒ももう俺の腹の中だ。


外から今度は人の声がする。


「ねぇ、何か声がする、暖炉がある部屋からよ」

「別に大丈夫さ。
あそこの部屋は何も置いていないし、扉も厳重に鎖や鍵をかけておいた」

「じゃあ、私達の部屋に入ってこれる人はいないわね」

「もちろん。
あの部屋には入ってきても盗る物も無いし、もう二度と外には戻れない」

「私達に助けを求めない限りね」

「その時は、その侵入者で美味しくディナーでもしようか」

「えぇ!とっても素敵!
あ、そうだあなた。
私そろそろ少女の大腸で出来たウィンナーを作りたいんだけど……」





もう俺は何年もここにいる。
きっとこれからもこの中に住み続けるだろう。
本当の持ち主なんて知らねぇ。
だって俺はここしか居場所が無いのだから。


俺の自慢の一張羅はもう限りなく黒に近い灰色になってしまった。
不衛生に伸びた髪の毛や髭は汚く煤けていた。
ベタベタとした不快感にはもう慣れてしまった。

「おい神様、俺が一体何をしたっていうんだい」


俺は上を見上げて、呟いた。
煙突の中に住んでいたから、空は丸く切り取られていた。


自由にトナカイの相棒と飛び回り、人々にプレゼントを配っていた日々はもう忘れた。
あの視界いっぱいに捉えきれない大空を、俺はもう忘れた。


暖炉の煙突には、苔や灰がへばりつき、つるつると滑って登れなかった。




…………………………





「お母さん、今年もサンタさん見れなかったぁ。
やっぱりサンタクロースなんていないんだね」

「当たり前でしょ。
さ、早く勉強しなさい。
今度のテストで90点以上とれたら、クリスマスプレゼントに何か買ってあげるわ」









『18XX年、12月24〜25日、貴族の歪んだ道楽によりサンタクロースは姿を消した。』

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