2/6ページ目 二位 内田沙良さん 好きと言って [恋愛] 私、崎山美久に生まれて初めて彼氏が出来た。 早い子は小学の五、六年から彼氏がいるけど私はその頃全く興味がなかった。 それよりもアイドルが好きで、彼氏がいる友達とは話が合わなかったと記憶している。 でも高校一年になって同じ班になった佐々木健と話しているうちに、少しずつ気になっていつの間にか好きになっていた。 背は私より十五センチ位高く、髪は全体的に短いけど前髪だけは少し長め。 はっきりしている顔立ちとは逆に、彼は周りの男子と比べると口数は少ない。 そんな彼を見ているうちに本当は優しい事、周りに気を使っている事がわかった。 そして好きと気づいてから放課後に告白するまで、約半年。 それまで自分から告白をした事がなかった私には、とても恥ずかしくて緊張した日になった。 それだけにこの日の事は、きっと忘れられないと思っている。 告白を受けた彼は 「…… どんな人かもわからないのに? 」 と明らかに迷惑そうな返事をしたけど 「わからないから付き合うんでしょ? 」 と強引に押して、押しまくって友達からという条件つきで付き合いは始まった。 それまで彼氏がいなかった私は男子との付き合いがわからなかったけど、そこは友達からという事で携帯のメールアドレスと電話番号を交換。 そして何が好きなのかを知りたくてメールをする事から始めて、慣れてきた頃に電話をかけるようになっていた。 その方法は当たって口数が少なくても話してくれるようになり、告白してから三ヶ月で普通に話せるようになったのだった。 そして驚く事に次の年には 「映画、見に行かない? 」 と健ちゃんの方から誘われて、まるで空を飛んでいるかのように嬉しくなった。 それまで学校帰りにファーストフードの店に行くにしても、休日に遊びに行くにしても私から誘っていただけにその時の喜びは言葉には言い表す事は出来ない。 少しずつ健ちゃんとの距離が近くなっていくのを感じるのは、素直に嬉しい。 世界中のみんなに、大きい声で叫びたいくらいに私は喜んでいた。 一部始終を事細かく友達に話したいくらいに浮かれていたけど、それはもったいなくて止めた。 だけどそんな幸せな絶頂期も、映画を見た後に信じられない事実を知る事になったのだった。 「お前、何で手を繋ぐの? 」 映画を見てから一週間後、カラオケに行った帰りにそう言われてすぐに言葉が出てこなかった。 それまでは何も言われなかったのに、映画を見た帰りにキスをされた後からの態度がどうもおかしい。 「えっ、駄目? 」 と聞くと健ちゃんは苦笑いをしながら「いいって言ってないよ」と意地悪く答えた。 そして手を離して歩き始めると、機嫌が悪い訳ではなくいつもどおりに話してくる。 そして家が近くなって来た時に不安になって「私の事、好き? 」と俯きながら聞くと 「何言ってんの? 」 と言われて泣きたくなった。告白した時は好きじゃなかったかもしれない。 だけどキスをしてきたって事は両思いになれたと思っていたのに。 それじゃあの日のキスは何だったんだろう。 「何って」 私はあまりに悲しくて、その先を話す事は出来なかった。 少しでも言葉にしたら、泣いてしまいそうだったから。 「だから、何でそんなくだらない事を聞くの? 」 そう聞いてそれまで我慢していたけど、もう限界だった。 健ちゃんがそう話したという事は、もう私に気持ちがないのかもしれない。 それともあの日に、嫌われたのだろうか。 初めてのキスでとても緊張して、固くなっていた私とのキスが嫌だったとしたら。 そう考えると悲しくなって、涙を止める事が出来ない。 片思いから始まってやっと両思いになれたのに。 もしかしたら「別れよう」と言われるかもしれない。 今でも好きで好きでたまらないのに、いつも会いたくて仕方ないのに。 それなのに別れ話をされたら、どうしたらいいのだろう。 「だから、そんな大切な言葉は軽く言えないって話そうと…… 」 と話した後に健ちゃんは、ぎこちなく肩を抱き寄せてきた。 そして耳元で「ごめん。言葉が足りなかった」と言うと頬にキスをする。 その言葉を聞いた私はほっとして嬉しくなって、ただ頷く事しか出来なかった。 言葉が足りなかった健ちゃんと考え過ぎた私。 これからも同じ事があるかもしれない。 だけどその時は辛抱強く健ちゃんの言葉を待ってみようと、そう思った時 「好きだよ美久」 と聞いてそんな言葉を聞けると思ってなかった私は、また泣いてしまったのだった。 完 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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